新しいネットを買って。
そういえばボールも何個か買い替えないと。
粉末ドリンクもそろそろなくなるな。
そんなことを考えながら、電卓とノートを見比べていると。
「ーーーーー!!!おまえ何やっとんねん!!!」
マネージャーでもないのに、ある仕事だけマネージャー以上にがんばってくれる人が部屋に飛び込んできた。
「なにって・・・今度はどうしたんですか忍足くん。」
「お前、タオルを新しいのに買い替えたな!」
「うん。だってもう汚かったから・・・毎日洗ってるからけばだって、うちのテニスの王子様は文句タラタラだったし。」
「なんつーもったいないことを!」
「確かにけばだってるくらいで、たかが汗ふくタオルを買い換えるのもどうかって思うけどさ。もう柔軟剤とかの問題じゃないんだよ。」
「柔軟剤とか汗ふきタオル洗うのにいらん!!むしろ衣類に柔軟剤なんかいらん!!」
「じゃあいったいなんなの。」
半分呆れて、興奮する彼に問う。すると思いもよらない、彼の興奮の理由が明らかになった。
「タオルは買ったらあかん!どーして部員からいらんタオルを募らんかったんや!?」
意味がわからない。
「・・・え?」
「・・・お前、なんのためにテニス部員が100人以上もおるんや。」
「テニスがしたいからじゃ・・・」
「テニスのために部員がおるんやない。タオルのためにおるんや・・・!」
「それは絶対違うと思うけど。」
「100人もおるんやで!絶対100人のうち50人以上の家に、結婚式の引き出物とかでもろたタオルが何枚かあるんやで!」
「まあ・・・あるでしょうけど・・・」
「それを集めてみ!昨日が買ったタオルはタダだったんやで・・・」
「はあ・・・そうですか・・・」
「なのに・・・、お前・・・!なんのためにおれたちがおるんや・・・!!」
テニス部員、しかもレギュラーの忍足くん。
ご両親はお医者さんで、忍足くん自身もすごく頭良くて。ちょっとかっこいいよねーと、女の子たちから人気だ。
確かに整った顔立ちは、あたしも認めるけど。
だけど忍足くんは、ちょっと変。
こんな学校に通っているくらいだから、お金がないわけじゃないのに。
「、お前に会計係はまだ早い。俺が管理したるから、その電卓とノートとレシートを貸し。」
「・・・・どぞ。」
レシートをちゃちゃっとまとめ、慣れた手つきで電卓を使い、ノートに書き込んで赤ペンでチェック。
たまに
「あかんわ・・・なんやのこれ。」
とか聞こえるその様。
「忍足くんってさ。」
「、あかんよ何なんこの先月のお菓子代。」
「100人分だよ。」
「いやそれでもこのお徳用キットカットとか、一袋に何個も入ってるやつやろ?それをこんなに買うて・・・」
「・・・・・・・・・・・お徳用で安売りのをたくさん買っても、「なぜか」すぐなくなるんだもん。」
「言い訳はいいねん!!大事な部費なんだから、もっと考えて使わな!」
忍足くんのブレザーは、なぜかいつも不自然に膨らんでいる。
今日もモッコリ膨らんでいるそれを見ながら、忍足くんの言葉にあたしはキレた。
「じゃああおまえのそのポケットの中はなんなんだあああああああ!」
「なっ・・・何すんねん、やめーーー!」
がしっとつかむとポケットの中には、たくさんのお徳用キットカットの小袋。
ブレザーだけじゃない。制服の中にも、あたしがこないだ買っておいたお菓子がたくさん詰め込まれていた。
「忍足くんのあほ!この、貧乏性っ!」
「節約家なんや!」
氷帝学園中等部 テニス部には
自称節約家の、超貧乏性イケメンがいます。
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